【部下のやる気を引き出すフィードバック1】ねぎらいの言葉の後は辛口でもOK?
こんにちは
人材開発プロデューサーの増田崇行です。
解決志向サイトに訪問していただき、ありがとうございます。このブログページでは
「解決志向」×「○○」
という形で主に職場での悩みを解消できるようなコラムをご紹介していきたいと思います。
第1回目となる今回は「解決志向」×「上司と部下の会話」です。
上司としての立場で必ずと言って良いほど悩まれる、「部下への接し方」。特に部下の業務に対してフィードバックをする場面で悩まれるのではないでしょうか。褒めたい点ばかりであれば気が楽ですが、実際はそうもいきません。経験の多い自分自身がみると指摘したいことばかりになってしまうなんてこともあると思います。
今回から全3回に渡り、「部下のやる気を引き出すフィードバック」に必要なことをご紹介していくので、上のような悩みを抱えている方は是非、参考にしてみてください。
とある上司と部下のありがちな会話
では、突然ですが以下の会話をご覧ください。
納期遅れで企画書を提出した部下に対するフィードバックです。
上司: 企画書の提出、ご苦労様。 でもさ、君はなんでいつも企画書の提出が遅れるわけ?部下: はあ。すみません。つい考え過ぎてしまって・・・ 上司: 部下: 上司: 部下: 上司: 部下: 上司: 部下:はあ・・・ |
いかがでしたか。上のような会話に身に覚えはあるでしょうか?
「これは、ウチの職場によくある会話」、または「こういう会話は滅多にないし、身に覚えがない会話」かもしれません。会社・組織の風土や雰囲気によってとらえ方も異なると思います。これは期待になかなか応えてくれない部下に対してついついやってしまうフィードバックの一例ですが、このフィードバックは「良いフィードバック」といえるでしょうか。
「良いフィードバック」を考える
そもそも、「良いフィードバック」、つまり、私たちが目指すべきフィードバックとは一体どんなフィードバックでしょう。
良いフィードバックとは部下のやる気を引き出して、次の仕事につながるようなフィードバックだと考えています。必ず“次”を視野に入れています。なぜなら、次に任せた仕事では今回よりも成果を出してほしいからです。そのためには部下のやる気を上げる、つまり、上司が部下のやる気を引き出してあげることが必要です。そんなフィードバックに出来たら良いと思いませんか
良いフィードバック=部下のやる気を引き出すフィードバック |
あなたの部下もこう感じているかもしれません
では、みなさんとフィードバックの理想像を共有したところで早速本題に入っていきたいと思います。まず、フィードバックの受け手である部下の立場に立って考えてみましょう。部下のやる気を引き出すには、やはり部下本人の受け取り方を考えていくことが大切になります。
最初は期待する部下ですが
上の会話では上司が最初に「企画書の提出、ご苦労様。」とねぎらいの言葉をかけています。納期遅れや不十分な内容はひとまず置いておき、ねぎらいの言葉をかけているところから感情に任せたフィードバックをする上司ではないことがうかがえます。
確かに、いきなりダメ出しからスタートされるより、部下にとってはありがたいフィードバックの例ではないでしょうか。何だか「ダメな部分もあるけれど成果もしっかり認めてくれているんじゃないか」と期待を持つことが出来そうなスタートです。
しかし、次の一言を見てみると「でもさ、君はなんでいつも企画書の提出が遅れるわけ?」とすぐに納期遅れについて言及し、ダメ出しを始めてしまっています。
これではせっかくのねぎらいは単なる「はじめの言葉」で、飾りに過ぎないと受け取られてしまいそうです。
「ダメ出しから入るのはまずいから、最初にワンクッション入れただけでしょ。本当はねぎらいの気持ちなんて一切ないんじゃないの」と伝わってしまう可能性があるわけですね。この場合、上司にねぎらいの気持ちがあるか、否かは問題になりません。大事なのは言葉の受け取り手である部下がどう感じるかですから、普段の関係性によっては上記のように受け取られてしまっても仕方がないのです。
そこからは延々とダメ出しばかり・・・
本当にこれで部下のやる気を引き出せるでしょうか。
ここに登場する部下は
「はあ。すみません。つい考え過ぎてしまって・・・」
「はあ。そうかもしれません…。」
という発言から自分の出来ていない部分について理解しており、反省の色も伺えます。そんな部下に対して出来ていない部分を指摘するばかりでは、痛いところを突かれるだけの説教になってしまいます。
「お説教」が続くと部下は
最初のうちは非を認め反省の気持ちを示していた部下ですが、延々と続くダメ出しに「一応、考えてはいるんですが…。」とささやかな反論をし始めています。こうなってしまうと今後何を言っても上司の話は部下に届かないでしょう。
部下としては、
・悪い部分しか目を向けられず、良い部分には何も触れられない
・悪い部分の伝え方もだんだん過剰になり、完全否定されている
そんな印象を持ってもおかしくないでしょう。むしろ、そうなってしまう方が自然だと思いませんか?その結果、やる気が出るどころか、逆に失ってしまう、そんなことになりかねません。
「親の心子知らず」ならぬ「上司の心部下知らず」の実態
一方で、上司の気持ちはどうでしょうか。
上司は部下の仕事に対して、出来ていない部分だけでなく出来ている部分も少なからず感じていると思います。しかし、改善してほしいのは出来ていない部分なので、どうしてもそこばかりを指摘してしまっています。上司としては部下が憎いわけでも、いじめたいわけでもないと思います。ただ、出来ていないところを改善して成長してもらいたい、成果を上げてもらいたいと思っているのではないでしょうか?
上司と部下の気持ちにギャップが生まれてしまっていますね。まさに、「親の心子知らず」ならぬ「上司の心部下知らず」。しかし、ここで変化しなければいけないのは部下ではなく、上司の方です。コミュニケーションは伝え手が自分の伝えたいことをしっかり伝える責任があります。コミュニケーションの受け手である部下の受け取り方に配慮して伝える必要があるのです。
つまり、部下のやる気を引き出したいと思いながら部下にフィードバックするだけでは、残念ながら不十分なのです。
とは言っても、部下の受け取り方と自分の伝えたいことを一致させることは、難しいことですよね。どうしたらいいのでしょうか?
まずはYES BUTから抜け出す
その1つの具体策としてYESBUT文脈は使わないという方法があります。そう、このフィードバックは典型的なYESBUTの文脈になってしまっているのです。YESBUTとは「YES=肯定的な表現」に続けて「BUT=否定的な表現」を用いる表現のことです。今回の会話では、
YES=企画書の提出ご苦労様
BUT=でもさ、君はなんでいつも企画書の提出が遅れるわけ? |
実は、この2つを一緒に用いると、最初のYESの印象が全く残らなくなってしまいます。部下にはBUT以下の部分しか伝わりません。
以上のことを踏まえて最後に、「ねぎらいの言葉の後は辛口でもOK?」かについて考えてみましょう。
まず、部下に改善してほしい部分だけを指摘するのは好ましくありません。改善してもらうためには出来ているところをまず認めて、だからこの部分も改善できるはずだと自信をつけてもらうことが大切なのです。
それが、部下のやる気につながります。
そのための1つ目のポイントとしてYESの後にBUTを続けないことは効果的です。ねぎらいの言葉をかければ後は辛口でもOKではありません。YES(肯定表現)がただの飾りにならないようにするためにはYESの内容を吟味してフィードバックに臨むこと、BUTの伝え方を変える(次回のテーマで詳しく解説します)ことが大切なのです。
以上、部下のやる気を引き出すフィードバック第1回目「ねぎらいの言葉の後は辛口でもOK?」でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。次回「意外と気づかないパワハラ予備軍」もよろしくお願いいたします。