【部下のやる気を引き出すフィードバック3】0か100だけじゃない、50もある
こんにちは
人材開発プロデューサーの増田崇行です。
さて、部下のやる気を引き出すフィードバック第三回目となる今回のテーマは「0か100だけじゃない、50もある」です。
前回は、部下に改善してほしい部分の伝え方について「NOでコントロールしない」ことが大切だとお伝えしました。今回は、その具体的な解決策として「YESでコントロールするにはどうすれば良いか」を解説していきます。
第二回をまだお読みになっていない方は先にそちらをお読みいただくことをお勧めします。
ではまず、お馴染みの方もいらっしゃると思いますが、以下の会話からご覧ください。
納期遅れで企画書を提出した部下に対するフィードバックです。
とある上司と部下の会話
上司: 企画書の提出、ご苦労様。 でもさ、君はなんでいつも企画書の提出が遅れるわけ?部下: はあ。すみません。つい考え過ぎてしまって・・・上司: そもそも、仕事の段取りが間違ってるんじゃないのか? 部下: はあ。そうかもしれません…。 上司: 部下: 上司: たぶんまずは時間の使い方が間違ってる。それに、あれこれ余計な情報が多すぎて企画書として まったくなってない。そもそも、事業計画のことをちゃんと理解してないだろ。 部下: 上司: 部下:はあ・・・
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いかがでしょうか。
まず、この会話の中でNOでコントロールしている部分は、
「結局、事業計画に沿った企画になってないじゃないか。」
「事業計画の目的を把握してポイントを掴めって、いつも言ってるだろ。まったく分かってないんだよな。」
「たぶんまずは時間の使い方が間違ってる。それに、あれこれ余計な情報が多すぎて企画書として まったくなってない。そもそも、事業計画のことをちゃんと理解してないだろ。」
などの部分ですよね。改善してほしいことをダメ出しする、つまりNOを突き付けているわけです。
上のダメ出しをまとめると、この上司は部下に対して、
・納期遅れ
・内容がまとまっていない
・事業計画に沿っていない
の以上3点を改善してほしいわけです。
さて、改善してほしいことが山積みですね。これでは、ダメ出しばかりのフィードバックになってもしょうがじゃないか、そんな声も聞こえてきそうです。
しかし、本当にそうでしょうか。そもそも、これらのダメ出しは本当にダメな部分なのでしょうか?そして、これらのことは全くできていなんでしょうか?
以上の2点について考えてみると、新しい見方に気づくことができます。
違う側面を見る~□に見えているものが実は〇かもしれない~
まず、ダメだと考えている部分が本当にダメなのかについて考えていきましょう。
例えば、「内容がまとまっていない」についてです。
これは内容が取捨選択された企画書を望んでいたのに、出来上がった企画書がそうではなく、上司の求めるものとは異なっていたことによるダメ出しです。
しかし、別の見方をしてみると
「内容が豊富である」、こう言いかえることも出来ないでしょうか。
それは屁理屈だという意見も聞こえてきそうです。確かに、実際に求められている企画書は内容が吟味され、まとまっているものですから、内容が豊富な(取捨選択されていない)企画書だからと今後も引き続き同じものを頼むことは現実的ではありません。
やはり、部下には求められている企画書を作ってもらえるよう変化してもらう必要があります。
しかし、最初から「これは内容がまとまっていないダメな企画書だ」と決めつけてしまうよりも、一度立ち止まって「これは内容が豊富で良くできた企画書なのではないか」という見方をしてみることは非常に有効です。
このように肯定的な見方をすることで、フィードバックをするときに部下の仕事の良い部分を見失わず、良いフィードバックをする助けになるはずです。
0か100から抜け出す~「しか」と「も」の大きな差~
次に、これらのことは全く出来ていないのか?つまり、改善してほしいことの現状の到達点に対する評価の仕方について考えていきます。
上の会話での上司はダメ出しの際に「まったく」や「結局」といった言葉を多く使っています。これらの言葉を受け取った部下は自分の現状の到達点は0だと受け取ってしまうでしょう。もしくは、0ではないのに、0として評価する上司に反発の気持ちが芽生えているかもしれません。
おそらく、納期遅れとはいえ完成した企画書を提出してきている以上、到達度が0ということはありません。
では、なぜ上司は0かのような伝え方をしてしまうのでしょうか。
それは、到達度が「50しかない」「50もある」の捉え方の違いによるものだと思います。
ここに登場する上司は「50しかない」と捉えています。だから、伝える時に熱が入ると50を0のように伝えてしまいます。これは、「しか」という表現がマイナス(0)に向いたものだからです。
一方で、「50もある」、このように捉えたらどうでしょう?
50も達成しているのだから、あともう少し頑張れば70、80、ゆくゆくは100へと成果を上げることができるぞとプラス(100)に目を向けられるのではないでしょうか.
YES AND MORE
すると、伝え方にも変化がでます。
今の時点で50もできている。次はもっと達成できる、80にいける。このような心持で伝えることができると思います。
これが、「YESでコントロールする」の正体です。
YESでコントロールするとは、ここができている、ここもできている、ここも、ここもYES、ここは後少し。
YES、YES 、YES AND MORE
と伝える方法です。
このように伝えられた部下は、「次の仕事でより成果をあげるためには何が必要なのか」に目を向けることができ、結果としてモチベーション高く、次の仕事に臨めるようになるのです。
以上、3回に渡り上司と部下の会話について考えてきました。
会話の伝え手である上司が受け手の受け取り方にまで責任を持つこと、受け手である部下のやる気を引き出すフィードバックを行うには、解決志向の考え方が有効であることを感じていただけましたら幸いです。少しでも共感していただけましたら、ぜひ実践の場でお試しください。
そして、この3回でお伝えしたことに加え、解決志向にはまだまだ活用の場があります。
次回は解決志向×会議をテーマにお送りしたいと思います。ご期待ください。